香港での企業は、為替変動の影響もあり経営に行き詰っていましたが
日本の会社は、香港で出会った香料会社のおかげで、仕入れコストが大幅に下がり、経営は好調でした。
しかし、調子のいいときほど気をつけろという教訓は、ちょうど2009年頃にも、すでに会社の経営そのものに関した事案として起こっていたのです。
「昨日のお客は明日の敵」コピー商品の悪夢、再び
当時日本では2006年からの売り上げのV字回復に全社を挙げて機運が高まっていた頃でした。
ソラフラワーディフューザーの売り上げのおかげで私も社員たちもがぜん前向きな姿勢でした。
某大手の雑貨チェーンに対する売り上げは過去最大になり、年商全体の25%を超えてゆきそうな気配さえありましたが、ある時を境にして急に売り上げが落ちてゆきました。
最終的にはそことの取引はゼロとなるのですが・・。
よくよく調べてみれば、お得意様であるはずのその小売りチェーンは弊社商品のコピーを店頭に置きだしていたのです。
私は弊社の担当者を呼びつけましたが、時すでに遅し。
100店舗ほどあるそのショップは国内では有名でインテリア雑貨のカテゴリーでもほぼトップに近い存在でした。
結局のところかなり痛手を被ったわけですが、2010年、2011年には私は、香港に注力し始めていた時期でもあり、もう訴訟を起こす気にはなれませんでした。
「今日のお客は明日の敵」という状況がついに起きたのです。
「遂に、」という言い方をしたのには、理由がありました。
実は以前から私はこのような事態がいつ起こってもおかしくはないとの考えを持っていたのです。
平成元年(1989年)に京都で初めてのショップを作って平成5年(1993年)に小売りから一旦撤退した当時に時は遡ります。
その時は、これからは小売りがマーケットの主導権を握る時代になると思っていたのですが、商品力もそれほどなく、しかも資本力もない小売店が主導権など握ることなどできないのだ、ということをその5年間で学んだ私は、川上のメーカーになって出直す選択をしたのです。
そしていつかはその商品力を培ってから川下の小売業に返り咲くというシナリオを作っていたわけです。
正に、川上のメーカーとしての立ち位置と川下の小売りという立ち位置からそれぞれ自分たちには備わっていないものを習得して補強してゆかなければならない時代となってきたという証でもあるわけです。
時はまさに戦国時代です。そしてこの川上軍と川下軍の戦いは、川中島の合戦となるのです。
川上のメーカーと川下の小売業との戦い
私は、自分が15年以上前に予見してた通りのことが起こっていることに驚くことはありませんでした。
訴訟など起こしたところで、この流れはだれにも止めることは出来ないからです。
小売店がオリジナル商品を自前で作るには、製造部門を持たない以上どこかに委託して作らせるよりほかに方法はないのですが、このチェーン店のみならず他の大手の小売りチェーンもみな右に倣えということで、海外の展示会にバイヤーを行かせて現地で交渉をしてオリジナル商品として輸入するパターンなのです。
主には製造コストの安い中国かタイからなのです。
内容は、はっきり言ってひどいものばかりです。
これではルームフレグランス市場自体が滅びてしまうとまで危機感を持つほどのものでした。
川下に位置するメリットは、エンドユーザー(最終顧客)と直に繋がるということですが、モノがひどければ当然売れません。
川上に位置するメリットは、いいものを生み出すノウハウができるということですが、エンドユーザーとは直に繋がっていませんので、川下の小売店さんへ卸売りをするということになります。
その際に、川下でその商品をブロックされてしまって、原価率のいいコピー商品へとすり替えられてしまうということが起きてしまっていたのです。
しかも頻繁に・・・・。
絶対にあってはいけないことですが、大手の企業ほどこのような悪事ともいえることを繰り返しているのが現状だと言わざるを得ません。
私は、この香り雑貨の業界に自ら身を置いて今まで時間をかけて真剣に取り組んできましたが、同じ業界のしかも大手企業のていたらくぶりには情けない思いで胸も痛くなりました。
しかし、同時にこれはある意味ではチャンスなのかもしれないと思いを深めたのです。
「小よく大を制す」です。
10年以上前から温めていた研究に再度本腰を入れはじめながら、また新しい形態のショップの構想も社内で構築し始めたのです。
201LAB (ニーマルイチ・ラボ)
2016年にフレグランスの量り売りの専門店をオープンさせたのが新しい形態の店舗です。
時代はすでにエコフレンドリーでサスティナブルな社会実現に向けて正に動こうとしていました。
また、競合他社のみならず取引先のチェーン店などでもコピー商品が溢れている中、お客様は何を頼りにして買い求めればよいのか迷います。
フレグランス雑貨はそのパッケージの見栄えや、派手さや安さによって売り場を占有している状況となってしまっているのですから・・・。
私達は、まさに中身のフレグランスにこだわっていることをしっかり打ち出す必要に迫られていたのです。
社員たちはPFP(プラットフォームプロジェクト)というチームを組んでこの201LABの骨組みを一から作ってくれました。
当初はPOP-UPを何度か続ける中で、テナントのお声掛けを頂き実店舗のオープンが叶いました。
空いたボトルを持参していただければ、フレグランスの中身だけを充填させてお買い上げいただけるというシステムです。
メーカーである以上、いいモノを作るという命題があるのは当然のことではありますが、日本でも「大量生産・大量消費」の掛け声のもと走り続けた結果は、大量廃棄によるごみ問題が深刻となり、ひいては地球温暖化の要因の一つとなっていることは間違いのないことです。
その意味合いにおいて中身だけを売るという販売スタイルはこれからの時代にマッチしているスタイルであると確信しています。