2022年5月17日
ここのところ寒々しい曇天が続いている。五月雨も風情があって嫌いではない。
でもやっぱり新緑の季節には、清々しい五月晴れの青が良く似合う。
庭の薔薇も今年はいっぱい花芽が付いた。
レオナルド・ダヴィンチ、シャンテ・ロゼ・ミサト、ロココ。そしてピエール・ド・ロンサール。
これは僕の大好きな薔薇だが、残念ながらロンサールは昨年逝ってしまった。
今咲いている中では、淡いピンク色のShante Rose Misato(シャンテ・ロゼ・ミサト)が一番綺麗だ。
名前の通りこの薔薇は、歌手の渡辺美里さんに捧げられた薔薇。
香りはややスパイシーでアニスやバジルの香を併せ持っている。それでいて透明感も感じる。
僕はこのカップ咲きの薔薇が形としては一番好きだ。しかもこのバラはディープカップなのだ。
花弁も大きめでとてもシルキーな手触り。表面に油膜が張っているのだろう。
雨で水滴が付くと球体になって転げ落ちる。
光を吸って煌めいた水滴がこの花弁から零れ落ちる様もこの上なく美しい。
五月雨と五月の薔薇。僕の催事記の中で五月は圧倒的に薔薇が主役を張っている。
フランスのグラースでも「ロゼ・ド・メ」と呼んでいて、五月の初旬の早朝に摘み取った新鮮な薔薇を、毎日午前中に蒸留して香料を抽出する。
その時の芳香が一番素晴らしいと言われているのだ。
イヴ・サンローランがPARISの名の香水を創ろうとした時、初めはモロッコ産のダマスクローズをイメージしたようだ。
しかし、当時無名だった調香師のソフィア・グロスマンはこのピンク色の「メイ・ローズ(五月の薔薇)」とブルガリアンローズをブレンドしたのだそうだ。今から四十年も昔の話。
後に「ローズの魔術師」と称されるようになった彼女もまた、この時期にこの薔薇に魅了された一人であることは疑う余地もない。
誰もが憧れる「ラ・ヴィ・アン・ローズ」。バラ色の人生をこの薔薇たちは約束してくれるだろうか・・。