Fragrance Lab. BLOG

フレグランス・ラボ通信

2023-02-01

#香りのエトセトラ

第20回|天然香料の抽出 Vol.2 圧搾法|香りのエトセトラ

 皆さん、こんにちは。

 冬の季節になると、国内では柚子やレモン、みかんなどの柑橘類が収穫のシーズンを迎えます。この柑橘類の果皮から天然香料(エッセンシャルオイル/精油)を抽出するのですが、その抽出方法には主に圧搾法が用いられます。
抽出方法として一般的に使われる水蒸気蒸留法とは何が違うのか、メリット/デメリットは、と気になる方も多いのでは。

フレグランスメーカーのアート・ラボがお届けする【フレグランス・ラボ通信】第20回目は、「天然香料の抽出 Vol.2 圧搾法」に関するお話です。

圧搾法とは

 圧搾法(Expression Cold-Pressed)とは、柑橘類の果皮を搾ることで精油を抽出する方法です。 柑橘の精油は果皮表面の組織内にある油胞(ゆほう)という場所に溜まっているので、機械のローラーで果皮に強い圧力をかける事で、この油胞をつぶして精油を搾り取ります。
みかんの皮を手で剥いた時に皮から液体が飛んだり手がベタっとしたりする事があるかと思いますが、それは油胞が破れて精油がこぼれ出た証拠なのです。 ローラーで搾られた精油には皮由来の水分も含まれているので、後工程で遠心分離する事で比重差により水と油に分けられます。
水蒸気蒸留法と異なり全く熱がかからない抽出法の為、コールドプレス(低温圧搾)とも呼ばれます。
圧搾法の歴史は水蒸気蒸留法より新しく、19世紀のイタリアで開発されます。柑橘類の一大産地であるイタリアでは当時、手作業で果皮を搾り、出てきた精油をスポンジに吸収させてたっぷり浸み込んだらスポンジを絞って容器に溜めていったそうです(「スポンジ法」とも呼ばれています)。 しかし、抽出量が少ないわりに多くの労働力を必要としたため、次第に機械化が進み現在の形となりました。

■メリット

 先述の通り、熱を加えない抽出方法なので熱による成分変化がほとんどなく、より自然な状態の精油を抽出することができます。 また、果皮由来の色素も同時に抽出されるので、精油自体も果皮の自然な色を呈します。

■デメリット

 圧搾時に果皮の繊維分などの不純物が混入しやすく、精油の品質劣化が水蒸気蒸留品に比べて早いです。また、化学変化を起こしやすいデリケートな成分を多く含む点も、劣化が早い要因の一つです。
圧搾法で抽出された精油は開封後なるべく早く使い切るのが鉄則です。

圧搾法が柑橘類に適している理由

 柑橘の精油を抽出する際に水蒸気蒸留法より圧搾法が適している大きな理由は、香りを構成している香気成分にあります。 少し専門的になりますが、オレンジやレモンといった柑橘類の香りは、リモネンをはじめとするモノテルペン類という非常に劣化しやすい香気成分が構成の大半を占めます。水蒸気蒸留法では熱がかかりこれらの香気成分が劣化してしまうので、熱を加えない圧搾法を用いる事で、フレッシュでピュアな香りを抽出する事ができるのです。

しかし、柑橘類にはフロクマリン類と呼ばれる光毒性を持つ成分(肌についた状態で紫外線に当たると皮膚にダメージを与える成分)が含まれているものあり、この成分を除去する目的で敢えて水蒸気蒸留法を選択する場合もあります。
圧搾法は柑橘本来の自然な香りを再現すべく、柑橘の世界的産地であるイタリアで当時の技術者たちが思考を凝らした抽出法とも言えると思います。

最後に

今回のフレグランス・ラボ通信は「天然香料の抽出Vol.2 圧搾法」をお届けしました。柑橘系に特徴を持たせた香り製品の一例を下記にあげておりますので、実際の商品を店頭などで試してみてはいかがでしょうか。

ではまた次回、【フレグランス・ラボ通信】〜香りのエトセトラ〜でお逢いしましょう。

この記事でご紹介した商品

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    201LAB ROOM FRAGRANCE は、ルームフレグランスの量り売り専門店「201LAB」のリードディフューザーオイルです。南国の夜に甘く優美な香りを放つジャスミンをイメージした香り/南太平洋の孤島、夜空に広がるパノラマビューを表現した香り/勝利の風をイメージしたフレッシュな香り/甘く爽やかなハチミツをイメージした香りなど。CITRUS FRUITY TYPEは、そんな瑞々しい果実の香りたちをイメージしたルームフレグランスオイルカテゴリーです。