皆さん、こんにちは。
フレグランスメーカーのアート・ラボがお届けする【フレグランス・ラボ通信】今回も魅力的な花たちのお話です。
第9回に引き続きESSENCE & FLEUR Vol.4として「ヴィオレット(スミレ)」の香りについてお話したいと思います。
ヴィオレット(スミレ)の分類と香気について
日本名では「菫(スミレ)」と呼ぶこの花は、西アジアからヨーロッパまで広く分布しています。
英語では「Violets(バイオレット)」
フランス語では「Violette(ヴィオレット※正確には最後のトは発音しないそうです)」と呼ばれ、800種類ほどもあるこの花の香りは世界各国で古くから愛されています。
その中でも、香水によく使われているスミレは「ニオイスミレ」という品種になります。
3月~5月頃にかけて咲く春を告げる花の一つで、青紫色の小さく可憐な花びらをつけます。
日本でも季節になると歩道の脇やガードレールの下など、身近な場所で自生しているのをよく見かけますが、控えめにひっそりと佇むその姿から、「謙虚・誠実」といった花言葉を持ちます。
その香りは爽やかな甘みを含みますが、とても特徴的な香りなので、他に表現するのが非常に難しいのです。
まさに唯一無二、代用が効かない香りと言えると思います。
また、ラベンダー等と同じく、心を穏やかにする効果やリラックス効果が期待できると言われています。
天然香料と合成香料
スミレの生花自体は強く香るのですが、花から抽出される精油(天然香料)はごく僅かで、とても貴重且つ高価なのです。
現在では一部のブランドの香水を除いてほぼ使われていないそうです。
花ではなく葉から抽出される「バイオレットリーフアブソリュート」という精油は今でも販売されていますが、力強いグリーンな香りが特徴的で、スミレの花の香りとはまた異なった印象になります。
そんな背景もあり、スミレの花を彷彿させる合成香料の開発が盛んになり、「合成イオノン」のような香料が生まれ、近年ではスミレの香りを比較的安価で再現する事ができるようになったのです。
フランス王妃も愛したお花
フランス国王ルイ16世の王妃、マリー・アントワネットがバラを愛していたことは有名な話ですが、バラと同じくらいにスミレの香りも好んでいた事はご存知でしょうか。
特にプチ・トリアノンで過ごした長い年月の中、彼女はバラとスミレの香水を愛用していたといいます。
当時、スミレの香りを香水で表現するのは技術的に非常に難しかったのですが、彼女の専属調香師であるジャン=ルイ・ファージョンは、スミレの花の精油とアイリスの精油を合わせる事で、スミレ本来の香りを再現していたのだそうです。
こうしたアントワネットの影響で、スミレの花はフランス中で大流行する事になるのです。
フランスでは当時お風呂に入る習慣が無く、身体の悪臭を隠す目的で香りの強い香水が使われていましたが、オーストリア出身のアントワネットにはもともとお風呂に入る習慣がありました。
なので、悪臭を隠す目的ではなく、好きな香りを楽しむ為に香水を使っていたのでしょう。
現代の私たちと同じ気持ちで香水を嗜んでいたと思うと、とても感慨深い気持ちになります。
フランス王妃も愛した謙虚で可憐なお花、是非一度その香りを手に取ってみてください。
また、ルームフレグランスとしてヴィオレットの入った香りを下記にご紹介しますので、お部屋で楽しみたい方には是非こちらもお試しください。
それでは次回の「香りのエトセトラ」でまたお会いしましょう。