皆さん、こんにちは。
春を象徴する花といえば「桜」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。桜は日本で最も有名なお花といえるほど、私たち日本人にとってなじみ深いものです。
さて、春になると香粧品や食品などで「桜の香り」「桜の味」といった桜商品を多く見かけるようになりますが、そもそも桜の香りと聞いてどんなイメージを持たれていますでしょうか。和を感じる温かいフローラルな香り？桜餅の香り？
・・・思い返してみると、案外ピンと来ない方も多いのでは。
フレグランスメーカーのアート・ラボがお届けする【フレグランス・ラボ通信】第21回目は、「桜の香りはどんな香り？」に関するお話です。
桜の香りの特徴
日本国内には桜（サクラ）のルーツとなる原種が10種類ほど確認されていて、これらを交雑させて現在では100種類以上の品種の桜を国内で見る事ができると言われています。
品種により、白っぽいものやさくら色や紅色・一重咲きや八重咲きなど、色や形状もさまざまですが、実は桜の品種の大半は香りがとても弱く、日本で最もポピュラーなソメイヨシノに関しては花に顔を近づけても香りを感じられるかどうか…という程度なんです。
それらのことから桜のエッセンシャルオイル（精油）は抽出が非常に困難だと言われており、その香気成分の含有率の低さが伺えるかと思います。
では「桜の香り」と言われて思い浮かぶ、あの桜餅のような香りはどこからやってくるのでしょうか。その答えは桜の葉に含まれる「クマリン」という香気成分にあります。
香気成分「クマリン」
クマリンは桜の葉やシナモンなどにも含まれる芳香化合物で、バニラに似た独特の甘い香りを放ちます。これが「桜の香り」の正体です。
とは言え、青々とした桜の葉からはクマリンの香りを感じる事はできません。難しいメカニズムは省きますが、実は桜の香りは、桜の葉を塩漬けしたり乾燥させたりする事によって葉の細胞の中でクマリンが作られ、あの桜餅のような独特な甘い香りがするのです。
クマリンを含む植物は他にもありますが、その代表格が「トンカ」というマメ科の植物です。トンカの種子（トンカビーンズ）から抽出される精油はクマリンの含有率が高く、フレグランスで桜の香りを再現する際にも、よく用いられる天然香料です。
ヨーロッパ圏で桜の香りと言えば？
先程桜の香りの正体はクマリンという成分であるというお話をしましたが、実はヨーロッパ圏と日本では「桜の香り」が必ずしも共通しているわけではありません。
欧州圏のブランドが展開している桜のフレグランスを嗅ぐと、甘酸っぱいチェリー（さくらんぼ）の香りが印象的に感じる事はありませんか。これは桜が英語で「Cherry Blossom（チェリーブロッサム）」と表現されるように、ヨーロッパ圏では「サクラの香り＝甘酸っぱいチェリーの香り」として連想されることが多いからのようです。
その理由はヨーロッパ圏で自生している桜は、チェリーの実を付ける「セイヨウミザクラ」という品種が多いためで、欧州の人にとってはそれが身近に感じる「桜の香り」なのだといわれています。
桜のそんな文化的な背景を知っておくと、日本と海外でそれぞれ感じる香りの印象も変わって面白いかもしれませんね。
最後に
今回のフレグランス・ラボ通信は「桜の香りはどんな香り？」をお届けしました。弊社アート・ラボでは、桜を始めとしてミモザやフリージアなど、春を代表するさまざまな香り製品を取り扱っていますので、実際の商品を店頭などで試してみてはいかがでしょうか。
ではまた次回、【フレグランス・ラボ通信】〜香りのエトセトラ〜でお逢いしましょう。
